愛奴人形0 +Two people who contradict it+

「も…ヤぁ…っ」
「煩い」
「あ…っ、ヤぁ…あ…ンぁあっ」
一方的なセックスは快い事なんて一つも無くて。無機質な玩具が奥で震動している。
それが、自分を無理矢理抱いている人のペニスで更に奥へと進んでくる。
苦しくて、喉がひり付く。
それでも、声は無意識で出てきてしまう。
どうしようもなく快楽に貪欲な自分のカダラが恨めしい。
こんなカラダにしたのはこの人で。
それでも、前は良かった。
寧ろ、以前なら、この人が自分を抱いていると思うだけで幸せだったのに。
「も…イく…っ!・・・ッ!ヤ・・放し…痛・・・た…」
自身のペニスからは白濁がとめどなく流れ出し、後ろから突き上げてくる震動のままにビクビクと溢れさせていた。
しかし、後少しで頂けると思った途端、その人の手によってそれはキツく握られ、頂く事は出来ない。
「な…っイ…ぁ…」
「黙れ。お前は俺に抱かれてりゃ良いんだよ。この淫乱が」
浴びせられる罵倒は殆んど耳には届かず、しかし何かを言われているのは分かる。
否、分かろうとしていないだけなのかもしれない。
かつては自分が愛した人が、今は自分の事を愛奴としてしか見てくれないその苦しさと寂しさ。



「ぁ…お願…も…イかせて…っ」
「もう少し我慢出来ないのか?」
「無理…も…やぁあっ…は…ぁ、ンっ」
何かが、自分の中で壊れていた。
愛しているはずなのに、自分は何故こんなにもこいつを酷く扱ってしまうのだろうか。
きっと、目の前で『あんな事』があったからだ。
信じていたこいつに、裏切られたと思った。
違うと否定するこいつの話を全く聞こうとしなかった自分が悪いのに。
どうしても、許せなかった。
「ンぅ…は…ぁ、おかしく…なる…」
「なれよ。おかしくなっちまえ。そしたら、何にも考えられなくなるだろ?」
何故こんな時に笑顔が作れるのか、自分の事ながら分からない。
もう一人の自分が、こいつを無茶苦茶に扱っている。
自分のせいにしたくなくて、俺はこいつを無理矢理抱く事で逃げているのだろう。
出てくる言葉は酷い事ばかりで。
こいつはきっと、もう俺の事を愛してはくれない。

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